家が小作農家で貧乏でおもちゃを買ってもらえなくて任天堂トランプだけが唯一の遊び道具だったニシオが稲藁と枯れ枝とどんぐりでがんばって作ったダイデンジンを地主の子である俺が馬鹿にして取り上げて田んぼに投げ捨てたらそれを拾いに行こうとして田んぼに入って行き収穫時期まで育った稲の中でうずくまって探していたところをたまたま収穫作業中で通ったうちの父ちゃんのコンバインのブレードに巻き込まれてゴミみたいな手作りロボと運命をともにして手足がバラバラにちぎれてしまい病院に運ばれて一命をとりとめたもののはだしのゲンの親戚の剛吉みたいに手足4本無い上に両眼失明の廃人になってしまった。
そんなところに不法侵入してきた子供がいるなんて予測できなかったということでうちの父ちゃんは罪に問われなかった。
ニシオ父にコンバインの修理代弁償しろよ!ときっちり請求したら、ニシオ母が温泉街でストリッパーと売春やってなんとか金を工面して持ってきた。
小作農に生まれるとミジメだな、地主の息子に生まれて良かった、と俺はつくづく思った。
俺は欲しいものはなんでも買ってもらえた。バトルフィーバーロボもサンバルカンも持ってたし、ガンダムのプラモデルも当時の俺には難しかったけど父ちゃんが買ってくれて親戚の兄ちゃんが組み立ててくれた。
セガSG-1000と任天堂ファミリーコンピューターも発売日に同時に買ってもらった。
任天堂トランプが好きだったニシオにも遊ばせようかと気まぐれで思ったけど、手足と目が無いカタワではダメかとすぐに思い直した。
うちとニシオ家ではこんなにまで生き物としての格が違うんだなと。うちは人間だけどニシオ家はしゃべる家畜のようなものなのだろうな、と子供ながらに納得したし今もそう思っている。
あれから40年、70代になった母親がまだ売春をしたり熟女モノAVに出ながら泥人形のような息子を養っていると風の噂で聞いた。
先日地元に帰ったとき気まぐれでちょっとカンパしてやろうかとも思って1万円を取り出したけど、やっぱり家畜にやっても有効に使えないだろうから、そのカネを能登半島募金箱に突っ込んだ。
とてもよいことをした。