北朝鮮のサイバー能力を研究する元陸上自衛隊通信学校長の田中達浩氏が26日までに産経新聞のインタビューに応じ、「日本は北朝鮮に比べサイバー面の実力は出遅れている」と指摘。「サイバー攻撃に対処する防衛隊の増員や人材育成を急ぐべきだ」と話した。
田中氏は陸自やハーバード大在籍時などでの人脈を生かし、現在は米国防総省と国務省のサイバー担当者らと情報を共有しながら北朝鮮のサイバー部隊の実力などを分析している。
田中氏によると、北朝鮮のサイバー部隊の人員数は現在約6800人で、約3千人態勢とされた2013年ごろから倍以上に増えたという。
田中氏は「サイバー部隊が約2900人とされる韓国の倍以上」と指摘した上で「万単位の人員がいるといわれるロシアや中国より少ないが、国全体の人口を考えると金正恩朝鮮労働党委員長がサイバー部隊を急速に強化させていることは明白だ」と分析した。
また、「北朝鮮ではサイバー部隊に入れば昇進が早い上、給与も高く、高級マンションも提供される。ハッカーを目指す若者のハングリー精神はすさまじい」と話した。
その上で、北朝鮮の現在のサイバー部隊について「実力面でいうと、米中露、イスラエルに続き5位」と指摘。日本については「人材育成が遅れており順位をつけられるレベルではない」と話した。
防衛省が14年3月に発足させたサイバー攻撃に対処する防衛隊の人員が100人程度と指摘し、「中長期で千人単位に増やすべきだ」と進言。日本全体でのセキュリティー人材も2万人以上不足しているとして「人数とともに、戦略的に役割を決めて人材を育てる必要がある」とした。(板東和正)
■田中達浩(たなか・たつひろ) 昭和50年防衛大学校卒業、陸上自衛隊入隊。幹部学校教育部長などを経て、平成20年3月に通信学校長に就任。退職後、24年7月から2年間、米ハーバード大学アジアセンターの上席客員研究員として、各国のサイバー問題や安全保障の研究に従事した。65歳。福岡県久留米市生まれ。
http://www.sankei.com/world/news/171027/wor1710270022-n1.html
「BAD RABBIT(悪いうさぎ)だ。復旧するには、金を支払え」北朝鮮のサイバー攻撃、攻撃拠点は海外、外貨稼ぎも
「BAD RABBIT(悪いうさぎ)だ。君のファイルは暗号化された。復旧するには、金を支払え」
パソコンの画面が停止し、画面上に英文が表示される。仮想通貨ビットコインの価格と制限時間が表示され、時間内に支払わなければ「値をつり上げる」と脅す。パソコンの使用者はパニックに陥り、焦りが高まる。
今月24日。ロシアや欧州、日本などで同様のサイバー攻撃が同時に発生した。攻撃は、コンピューターのデータを使えなくし、復旧の対価に金銭を要求する身代金要求型ウイルス(ランサムウエア)。今年5〜6月にも世界各地で発生し、北朝鮮が関与した疑いがロイター通信などで報じられた攻撃と同じだ。
確たる証拠はないが、過去の手口から、24日の攻撃も北朝鮮の関与を疑う声が専門家から相次いでいる。
「払わないと、重要な顧客情報を失ってしまう」
複数の欧米セキュリティー会社には、世界の企業関係者などから相次いで連絡があったという。ウクライナのオデッサ国際空港では航空便に遅延が生じる被害などが発生した。
北朝鮮のサイバー部隊は、こういった被害をもたらすほか、金正恩朝鮮労働党委員長の暗殺作戦の流出に代表される情報窃取など多種多様な攻撃を仕掛けているとされる。ただ、北朝鮮は、通信インフラが発達していないため攻撃は主に海外の拠点で行う。
サイバーセキュリティーに詳しい慶応大学の土屋大洋教授によると、北朝鮮のサイバー部隊は大きく分けて、国内で作戦計画を立てる「頭脳班」と海外の拠点で攻撃を仕掛ける「実施班」に分かれる。
実施班の拠点は中国、マレーシア、インドネシアなどに設置。普段はIT企業の社員などに成りすまして外貨を稼ぐ。頭脳班から指令がきたら突如、サイバー部隊としての任務を開始するという。(板東和正)
http://www.sankei.com/world/news/171027/wor1710270021-n1.html
田中氏は陸自やハーバード大在籍時などでの人脈を生かし、現在は米国防総省と国務省のサイバー担当者らと情報を共有しながら北朝鮮のサイバー部隊の実力などを分析している。
田中氏によると、北朝鮮のサイバー部隊の人員数は現在約6800人で、約3千人態勢とされた2013年ごろから倍以上に増えたという。
田中氏は「サイバー部隊が約2900人とされる韓国の倍以上」と指摘した上で「万単位の人員がいるといわれるロシアや中国より少ないが、国全体の人口を考えると金正恩朝鮮労働党委員長がサイバー部隊を急速に強化させていることは明白だ」と分析した。
また、「北朝鮮ではサイバー部隊に入れば昇進が早い上、給与も高く、高級マンションも提供される。ハッカーを目指す若者のハングリー精神はすさまじい」と話した。
その上で、北朝鮮の現在のサイバー部隊について「実力面でいうと、米中露、イスラエルに続き5位」と指摘。日本については「人材育成が遅れており順位をつけられるレベルではない」と話した。
防衛省が14年3月に発足させたサイバー攻撃に対処する防衛隊の人員が100人程度と指摘し、「中長期で千人単位に増やすべきだ」と進言。日本全体でのセキュリティー人材も2万人以上不足しているとして「人数とともに、戦略的に役割を決めて人材を育てる必要がある」とした。(板東和正)
■田中達浩(たなか・たつひろ) 昭和50年防衛大学校卒業、陸上自衛隊入隊。幹部学校教育部長などを経て、平成20年3月に通信学校長に就任。退職後、24年7月から2年間、米ハーバード大学アジアセンターの上席客員研究員として、各国のサイバー問題や安全保障の研究に従事した。65歳。福岡県久留米市生まれ。
http://www.sankei.com/world/news/171027/wor1710270022-n1.html
「BAD RABBIT(悪いうさぎ)だ。復旧するには、金を支払え」北朝鮮のサイバー攻撃、攻撃拠点は海外、外貨稼ぎも
「BAD RABBIT(悪いうさぎ)だ。君のファイルは暗号化された。復旧するには、金を支払え」
パソコンの画面が停止し、画面上に英文が表示される。仮想通貨ビットコインの価格と制限時間が表示され、時間内に支払わなければ「値をつり上げる」と脅す。パソコンの使用者はパニックに陥り、焦りが高まる。
今月24日。ロシアや欧州、日本などで同様のサイバー攻撃が同時に発生した。攻撃は、コンピューターのデータを使えなくし、復旧の対価に金銭を要求する身代金要求型ウイルス(ランサムウエア)。今年5〜6月にも世界各地で発生し、北朝鮮が関与した疑いがロイター通信などで報じられた攻撃と同じだ。
確たる証拠はないが、過去の手口から、24日の攻撃も北朝鮮の関与を疑う声が専門家から相次いでいる。
「払わないと、重要な顧客情報を失ってしまう」
複数の欧米セキュリティー会社には、世界の企業関係者などから相次いで連絡があったという。ウクライナのオデッサ国際空港では航空便に遅延が生じる被害などが発生した。
北朝鮮のサイバー部隊は、こういった被害をもたらすほか、金正恩朝鮮労働党委員長の暗殺作戦の流出に代表される情報窃取など多種多様な攻撃を仕掛けているとされる。ただ、北朝鮮は、通信インフラが発達していないため攻撃は主に海外の拠点で行う。
サイバーセキュリティーに詳しい慶応大学の土屋大洋教授によると、北朝鮮のサイバー部隊は大きく分けて、国内で作戦計画を立てる「頭脳班」と海外の拠点で攻撃を仕掛ける「実施班」に分かれる。
実施班の拠点は中国、マレーシア、インドネシアなどに設置。普段はIT企業の社員などに成りすまして外貨を稼ぐ。頭脳班から指令がきたら突如、サイバー部隊としての任務を開始するという。(板東和正)
http://www.sankei.com/world/news/171027/wor1710270021-n1.html